マルゴー村アルサックのコミューンにある5代目当主クリストフ・ランドリーさんのシャトー・レ・グラヴィエールは、ローザン・セグラやディサンなどマルゴー村を代表する格付けの畑に囲まれる中でもひときわ輝くアルティザン・ボルドーです。
大きく4区画に分けられる畑は自然農法を実施し、周辺の森林なども含めた自然の力を活かした環境農法を理念に掲げています。牛や馬も飼育しており、自家製のマリアトゥーン調剤の作成など、マルゴー村内で循環環境が整うよう努力している生産者です。
1998年から有機農法を導入、2009年申請をし、2012年にEUのBIO認証を受けています。現在はビオデナミBiodynamieも取り入れた農法を行っています。ブドウ畑の周りの小川や森林が生態系を作り、鳥や虫を寄せ付ける。これはまさに生命力を生み出すことであり、自然の力でブドウの樹自体の力を上げていくのが理想であり、徐々に結果が出ている、とクリストフさんは語ります。既存のビオデナミ農法の他、思いつく限り全ての畑に良いことを実践。畑に糖分を与えるため、自家製はちみつや牛乳を石灰に混ぜ散布したりと、独自の工夫もしており、日々畑へのアプローチと観察を繰り返しています。
ブドウは6品種を栽培。 作付面積比率は、カベルネ・ソーヴィニョン61%、メルロ26%、カベルネ・フラン5%、プティ・ヴェルド3%、マルベック3%、カルメネール2%です。
マルベックの植樹の際には、苗木業者よりブライの自然農法の筆頭生産者であるブルーノ・マルタンさんBruno Martinを紹介してもらい、アドバイスを受けるというアルティザン同士のつながりもありました。
グラヴィエールのブドウ畑の脇に生えているハーブ類(カモミールやローズマリーなど)と、近所の酪農家からいただいたホエーを混ぜて使った自家製の虫よけ散布液や、麦やトウモロコシなどを自家発酵させた土壌環境を整える液も畑に散布します。
自家製の牛糞調剤。シャトー・デ・グラヴィエールでは、馬や牛も飼っており、自家製でマリアトゥーンの調剤を造っています。(右写真)
EUのビオロジック認証は受けており、また、独学でビオデナミを取り入れていますが、ビオデナミの認証は今のところ受けるつもりはない、とのことです。認証の基準にとらわれず、思う存分、自分の判断で畑・ブドウに良いことをやっていきたい、という理由からです。
3種のタンクと1つの樽を使い畑由来の自生酵母で発酵。
小タンク(カベルネ・フラン:マセラシオンカルボニック)
中タンク(マルベック&プティ・ヴェルド:ピジャージュ実施)
コンクリタンク(カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、プレス後のプティ・ヴェルド)
600L樽(カルムネール: 収穫後樽にダイレクト)で行っています。
熟成にはさらに品種ごと6つのタイプの異なるアンフォラや樽などを使用しています。小アンフォラ(プティ・ヴェルド、メルロ)、大アンフォラ(マルベック)、225L樽(カベルネ・ソーヴィニョン)、400L樽(メルロ)、 600L樽(カルムネール)、 大樽(カベルネ・フラン) にてそれぞれ 12〜16ヵ月熟成。ステンレスタンクや樽などは全て特注でボトムの形状や材質は自分で指定。バリックにいたっては、ストラディバリ ウスのバイオリン作りに着想を得て、森を借りて木材から管理し、組み合て時の材質の配置も指定しています。その徹底した細分化したワイン造りは、もちろん徹底した畑の品種やパーセル管理からくることはいうまでもありません。
1日2時間、熟成中のワインがリラックスするように、スティールパン系のヒーリング音楽を聞かせています。世界的な銘醸地マルゴーにおいて自らの思い描く究極のワインを妥協無く追及している究極のアルティザン(職人)です。